これはGoogle Summer of Project 2012の参加プロジェクトの一つで、今年の8月にsoc-2012-unified-transformationブランチがGIMPに取り込まれました。
これまで別々に存在していた各種変形ツール[回転、拡大縮小、剪断、遠近法]が一つの変形ツールに統合されました。一つのツールでこれらの変形作業を行うことができます。
統合変形ツールはツールボックス、もしくはメニューの ツール→変形ツール→統合変形ツール にあります。
ツールオプションは他の各種変形ツールと似たようなオプションがありますが、次のオプションが統合変形ツールには追加であります。
- Constain (Shift) - 変形方法を固定で指定
- Move - 移動
- Scale - 拡大縮小
- Rotate - 回転
- Shear - 剪断
- Perspective - 遠近法
- From pivot (Ctrl) -旋回軸から
- Scale - 拡大縮小
- Shear - 剪断
- Perspective - 遠近法
- Pivot - 旋回軸
- Snap (Shift) - スナップ吸着
- Lock - ロック
Constainでは統合変形ツールの変形方法を固定で指定できます。統合変換ツールを使用中にShiftキーを押せば指定した方法以外の中から方法を選ぶことができます。
From pivotでは、(Ctrlキーを押せば)選んだ変形方法のときには旋回軸の向こう側も変形するようになります。例えば剪断変形を行っているとき、右辺をドラッグすれば右辺だけが変形していることが、右辺のドラッグにあわせて旋回軸の向こう側の左辺も変形される、という具合です。これは言葉での説明よりも、実際にCtrlキーを押して試してもらったほうが分かりやすいです。
Pivotは、旋回軸のためのオプションです。Snapでは旋回軸を移動させるときに旋回軸がグリッドに吸着します。Lockのほうは、旋回軸を固定すると説明にあるのですが動いてしまうので効果がよくわかりません。
統合変形ツールの種類と、使用法を説明します。
このような画像を用意して、そこに矩形の選択領域をつくりました。
この選択領域を統合変形ツールで変形してみます。
これが統合変形ツールの基本的な状態です。
変形操作を行って「変換」ボタンを押せば実際に変形処理が実行されます。
この統合変形ツールのダイアログは統合変形ツールを使用中は毎回出現しているのですが、ダイアログの大きさが大きいのでこれ以降は表示を省略しています。
ちょっとグリッドの数が多すぎていけませんね。グリッドを減らせばよかった。
矩形の選択範囲の、上辺、下辺、左右の辺、右上右下、左上左下、それぞれの場所にある四角いマークをクリックしてドラッグすれば、それぞれのポジションに応じて異なる変形方法で変形を行います。
スクリーンショットにマウスカーソルが映らないので分かりにくいですが、実際は機能が働く部分にカーソルを合わせるとマウスカーソルの画像が変わるので、その部分をドラッグすると何の変形を行えるのか分かります。
移動
選択内のグリッドの領域をどこでもドラッグすると、そのまま平行移動します。
普通の移動ツールのような動作です。
回転
選択の外の領域をどこでもドラッグすると、回転します。
中心位置(旋回軸)を中心に回転するので、旋回軸を動かしてやると下のようにずらされた旋回軸を中心に回転します。
拡大縮小
四隅の正方形のうち、外側の正方形をドラッグすると拡大縮小変形になります。
また、上下左右の四辺の中央にある正方形をドラッグすると、その辺だけが拡大縮小します。
剪断変形
上下左右の辺にある、塗りつぶされたスペード型?の四角形をドラッグすると、その辺が剪断変形します。
遠近法変形
右上、右下、左上、左下の四隅にある、塗りつぶされていないスペード型?の四角形をドラッグすると、その部分が遠近法変形します。
変形操作のための基本的なルール・仕様はこちらに書いてあります。
→ Unified Transform Tool
→ Transformation tool specification (gui.gimp.org)
今までは選択した変形ツールの方法で変形できていたものが、変形ツールの操作方法自体が新しい統合変形ツールとなったため、使い方を覚えるまで少々苦労するかもしれません。
いくつもの種類の変形が必要な場合はこのツールひとつで行えるので、覚えた後は楽になるでしょう。
変形のための四角い操作ハンドルを見ていて思ったのですが、もし変形対象が小さい領域だったらどうなるでしょう?
四角い操作ハンドルが重なって表示されたり、それぞれの操作ハンドルを区別して選べるのか?と思ったので試してみました。
うーん、これはダメだ。800%ぐらに拡大表示しないといけませんね。
GIMPに統合変換ツールという新しいツールが追加されたわけですが、ここで次期バージョンに予定されている機能について確認してみましょう。
公式のGIMP-2.10での目標より。
- GIMPコアのGEGL移植を完了させる
- 高ビット色深度のサポート
- レイヤーグループにおけるレイヤーマスクのサポート
- libgimpのクリーンナップ(レガシーコードの整理)
- GSoC2011プロジェクトのマージ
- 統合変換ツールを動作可能に
- (GTK+3へ移植)
GSoC2011はSeamless Cloning、Warp Transform tool、new GimpSizeEntry widget、OpenCL in GEGL、Porting GIMP plugins to GEGL operationsがありました。
必要な作業量を考えると、GIMP-2.10に至るまでの道はまだまだといったところ。gimp.orgでも開発者を募集してました。人手不足はかなり切羽詰まった問題のようです。
開発版GIMPは使用中に不定期なクラッシュが発生していますし、安定性に問題があるので原因解明と修正が必要でしょう。